うなぎはやっぱりスタミナ食

奈良時代(780年頃)に取りまとめられた『万葉集』の中で大伴家持が詠んだ「石麻呂に 吾れもの申す 夏痩せに よしといふものぞ 鰻とり食(め)せ」という和歌は有名ですが、当時から既にうなぎは健康食として認知されています。もちろん、当時は今のように科学的な栄養分析などはできませんから、経験によるものです。
うなぎというと“スタミナ食材”のイメージがあります。日常的に使っている「スタミナ」という英語には≪体力・持久力・精力・活力≫という意味があります。
うなぎに含まれる栄養素は非常に多く、その作用も様々なため、今回は「スタミナ」という観点に絞ってうなぎの栄養素を科学的に見てみます。

体を動かす上で最初にエネルギーになるのは糖質です。炭水化物を食べるとそれが糖質に分解されエネルギーになりますが、糖質をエネルギーに変える役割を持つのがビタミンB1です。
ビタミンB1が不足すると、いくら糖質を摂ってもエネルギーにならず、疲れやすくなります。
うなぎは、ビタミンB1を多く含む食材です。
文部科学省がまとめている「日本標準栄養成分」で他の食材と比較すると、ビタミンB1が多い食材の代表格である豚肉が100g中0.77㎎、うなぎ蒲焼は0.75㎎、マグロ類ではキハダが0.15㎎となっています。

また、糖質以上に大きなエネルギーを生み出す脂質の代謝に重要なのが、ビタミンB2です。糖質と同じく、脂質もビタミンB2が不足しているとエネルギーとして活用されにくくなります。他の食材との比較では、豚肉が100g中0.13㎎、うなぎ蒲焼では0.74㎎、キハダマグロが0.09㎎となっています。
脂質をエネルギーに変えるという点で、最近はダイエットの分野でも注目されています。
また、ビタミンB2には、細胞の再生を促し、老化の原因となる体内の酸化物質を分解する働きもあります。

体の中で栄養を運ぶのは血液です。その血液の健康を保つのに重要な役割をしているのがビタミンB12です。
ビタミンB12は葉酸と共に、赤血球の生成、造血機能の維持に不可欠です。ビタミンB12や葉酸が不足すると貧血になり、様々な栄養や酸素を体中に運ぶ機能が低下するため、疲れやすくなったり、息切れしやすくなったりします。豚肉が100g中0.3μg、うなぎ蒲焼は2.2μg、キハダマグロ5.8μgとなっています。
血液の生成に不可欠な葉酸は身肉中にはあまり含まれず、レバー(肝臓)に多く、うなぎの肝にも豊富に含まれています。

※余談として
うなぎの蒲焼が今のような開いた形で食べるようになったのは江戸時代からといわれています。それ以前は、丸ごと串に刺して焼いていて「蒲(がま)の穂に似たり」という記録が残っています。大伴家持が歌に詠んだ時代は、うなぎを丸ごと焼いていたと思われるので、内臓(肝)も一緒に食べていたのではないでしょうか。

持久力という点では、当社と東京海洋大学・海洋科学部との共同研究により、うなぎには「カルノシン」というペプチド(複数のアミノ酸が結合した物質)が多く含まれていることが分かっています。
カルノシンは、必須アミノ酸の一種であるアラニンとヒスチジンが結合したもので、結合方法の違いでアンセリンというペプチドがあります。カルノシンとアンセリンは、高速で泳ぎ続けるマグロやカツオ、長期間回遊するサケ、長距離を飛行する海鳥や渡り鳥などが、なぜずっと動き続けられるかを研究することで発見されました。
まだ詳しいことは公表できませんが、うなぎも養殖池の中でずっと泳ぎ続けているんです。天然うなぎも同様なのか、養殖うなぎ特有のことなのか、もしかしたら産卵場が遠く離れているうなぎは、その長距離移動に備えてカルノシンを蓄積しているのかもしれませんが、それはこれからの研究結果を待ってからとなります。
「カルノシン」は、抗酸化機能に加え、運動時に生じる乳酸(疲労物質)によるpHの低下を抑制する作用があります。つまり「カルノシン」を摂取することで疲れにくくなるわけです。
この「カルノシン」や、同様のペプチドである「アンセリン」は抗疲労物質として、更に最近は老化防止の機能性成分として注目を集めています。

こうして見てみると、やはりうなぎは「スタミナ」という言葉が合う食材です。
体を動かす前に食べれば、ビタミンB1の作用でエネルギーを供給し、カルノシンの作用で疲れ知らず。
体を動かした後に食べれば、ビタミンB2の作用で疲労回復といった効能が期待されます。

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